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電子譜面台の考察

先日、銀座を散策中、「山野楽器」で電子譜面台「MusicPad Pro」の実機を発見。

Y090202014

誰しもが夢見る近未来的発想な電子譜面台。
当然、まだまだ普及しない代物であることは察しの事情であるが、
その話題を中心に某会員制メールマガジンのコラムで取り上げてみたので、
ここでさらに考察してみたいと。

そもそも楽譜が紙ベースのアナログでありつづける点はなんであろう。
1)可搬性
2)使用する場所を選ばない
3)取り回しが楽
4)保管・管理のしやすさ
5)価格、値段、楽譜流通のインフラ

これらをクリア、ないしは、これを超えるアドヴァンテージがあれば「電子譜面台」に未来はあるかもしれない。
以下、紙ベースの楽譜との比較などを中心に可能性を列記してみる。

1)持ち運びについては、電子譜面台も確かに配慮した感触があるが、それでも、なお本体ディスプレイだけでも重量は意外にある。ついでに譜めくりようのフットペダルやスタンドなどアクセサリー一式ならなおさらである。日常で楽器と一緒に持ち歩くには、まだまだしんどいだろうと思われる。

画面スペース的にも狭い。例えば見開きに対応して、既存のピアノ譜面立てに載せられるようになると、需要は一気に高まるだろう。結局は折畳み可能であったり、丸めて収納できるような「電子ペーパー端末」であれば実用性はアリ。

しかし、現時点でも、かさばるほどの楽譜を持ち歩く必要のあるシチュエーションでは重宝するかもしれない。

例えば、旅回りの指揮者あるいは演奏家(アシスタントなし)、楽団ライブラリアンなど…
にしても専用ハードウェアを求められる以上、やはりかなりむつかしい。

2)電子譜面台において、使用場所での「電源の確保」が一番のネックとなる。屋内、外問わず、設備された舞台やステージなどに限定されるだろう。想定外の場所などでの電池駆動は、まだまだ心もとない。

とはいえ、返せば、あからじめセッティングされた場所や備品として扱うようなスタジオにおいては、利便性が高いだろう。これは1)の条件をもクリアしているという意味においても。

一方で現時点で有用なシチュエーションは考えられる。

例えば、オペラやミュージカル、イベントなどのオーケストラピットや、演劇における舞台上の生演奏など「暗転」を伴う上演において。画面の光量によるが、譜面灯の準備やチェックが省けるだろうし、ただでさえ暗闇での楽譜の扱いは神経を使うが、これらが解消されるかもしれない。すでに譜面灯の設備がある場所ならば、電源が確保されているはずだろう。

3)取り回しにおける柔軟性は圧倒的に紙であろうが、2)の述べたように、電子譜面台が常態である演奏現場においては、むしろ手軽になる可能性がある。

例えば、あらかじめ使用する電子譜面を事前に用意しておき、出先へのデータの移動で事は済む。つまり物理的に荷物を減らせる。

もっと進化的に考えてみるならば、オーケストラ全員の奏者が電子譜面台を使用するならば、ほとんどの奏者が「譜めくり」から解放される、特に弦楽器ほど有益だろう。

さらに指揮者も電子譜面付指揮台で、指揮者と奏者すべての譜面台がネットワークに接続されているとしよう。画面共有などで、指揮者の口頭の指示のみならず、画面上でのタッチペンによる楽譜に対する指示やメモ、スコア上の例を引用したPowerPointのように説明が繰り広げられるかもしれない。

いずれにしてもハードウェア的な制約があるが、このような近未来的な活用も考えられる。

4)保管と管理に関しては、ここ数年、デジタル領域がアナログに迫る感じがある。
デジタル書類術などで語られるのと同じで、ScanSnapに代表されるドキュメントスキャナーとPDFによる管理が一気に加速した時期に重なる。コンピューターの整理術となんらかわりない。

楽譜における状況といえば、いまだなお、変型版のサイズが多いことであろう。スコアもB4サイズ以上はあたりまえである。判型の大きな書類の取り込みには、いまもなお苦労する。

一方で国内でも比較的普及している代表的な楽譜作成ソフト「Finale」からの出力を考えると、むしろデジタルの取り回しの方が、応用が利くかもしれない。
これらで作成された楽譜版下は、そのままPDFや画像ファイルなどに変換できる。学校や演奏団体・楽団など、大量の楽譜ライブラリーを扱うようなケースでは、すべてをデジタル書類化することで、保管スペースや心理的負担から開放されるだろう。

進化的に考えるなら、ぜひともWi-Fiを搭載するべきである。データ保管のサーバーから必要な時に必要な楽譜データを端末に送り込む。「あの曲だけ自宅に忘れた!」などの外出時のうっかりをカバーできるかもしれない。

楽譜送達の手段の変遷は、手渡し→郵送→FAX→電子メール→Wi-Fiである。

とはいえ、楽譜である以上、NoCopyや権利周りの処理などはつきまとうだろう。さらに、現状の電子譜面台では、汎用性のない、特殊な形式やフォーマットを使用しており普及の足止めにしかならない。

5)電子譜面台の価格は、2009年の現在でも10万円を超える。バランスを考えてもまだまだ手が出しづらい設定である。1)で述べたとおり「電子ペーパー端末」の普及と近いタイミングで変革が起こるかもしれない。

そして、楽譜の流通も一般書籍と同じ、これまでの長い歴史の中、出版社、楽器店から消費者へのルートが確立されている。これが電子楽譜になれば、現状の電子書籍のダウンロード型販売の形と同じ形態となるだろう。過去の作品のデジタルコンテンツ化には、それ相応の期間を要する。

現在でもPDFフォマットやFanaleデータでの楽譜ダウンロードの販売は専用サイトで行われており、これらは個人でプリントアウトや楽譜ソフトでの再利用がメインとなるが、これが直接、電子譜面台での表示・利用が可能となれば、相乗効果的に普及すると考えられる。

 以上つらつらと考えつくところを…。これら踏まえて、電子譜面台のアドヴァンテージを発揮する具体案としてこんなのはどうだろう。例えば「楽譜出版予定のある楽曲のレコーディング現場」においてである。

・作曲者(編曲者)は、スコアをFinaleなどで作成する。
・完成されたスコア(データ)は、すぐに写譜業者へと電子メールなどで入稿。
・写譜業者では、スコアのデータからパート譜を作成。データのまま納品。
・納品された楽譜データは、そのままスタジオに備え付けの電子譜面台端末にアップロード。データなので単純に人数分のプルト増しやスコアコピーなどの作業は一切省かれる、もちろんデリバリーも。
・実際にレコーディングで使用された楽譜データは、奏者による書き込みなどメモ書きを含めた形で保存、それをデータとして回収する。
これは後日、出版用楽譜を編集する際に反映させる目的である。ここまでの一切の行程はペーパーレス。

初見である点、プライベートでない譜面であることが条件であるが、電子譜面台の改良とスタジオ整備の予算が叶えば、比較的早期に導入可能ではないだろうか。

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