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作曲家の為の「楽譜の書き方講座」1_声部やパートの指定

(本書「音色の設計図としてのスコア」に関連する補追です。)

しばしば、オーケストラや吹奏楽などのスコア上で混乱、誤用されがちなものに以下の表記がある。(ちなみにピリオドがあるものは省略表記)

「div.」「unis.」「solo」「tutti」 「a2(a3など)」「one play」「all (play)」

さて、必ずしも正しい用法とは断定できないが、より分かり易い、スマートな使い分けを以下にまとめておこう。

1)まず、必ず「対」で使われるものを整理しておく。一方の指示の後には、必ずもう一方でリセットされる。「div.」の後に「tutti」は使わない。
「div.」←→「unis.」
「solo」←→「tutti」
「one play」←→「all (play)」、あるいは「tutti」

2)「a2」と「unis.」の違い
・複数のパートが、一段にまとめられた譜表において使われるのが「a2(a3など)」よって、この譜表上では「div.」と「unis.」は使わない。(もともと複数のパートなのだから、分割とはいえない)

例)Flute1,2やHorn1,2などの一段譜表で、どちらのパート(1stも2nd)も同一であることを指示するには「a2」を用いる。その後、声部が複数に戻り、それぞれの担当パートに戻るところに「div.」の表記は不要。

・「unis.」は「div.」の対語。「div.」は一つのパート内で、さらに声部を分割するときに使われる。
例)Clarinet1の一段譜表で、さらに声部を2つに分けるときには「div.」を使用する。その後、分割された声部が、元来の一声部に戻るところには「unis.」を表記。

※「a2」と「unis.」が混用されるケースが多いのだが、これらの使い分けは、つまりどっちの状態がデフォルトか?である。もともと複数のパートでならば「a2」であるし、もともと一つのパートなのであれば「unis.」である。

3)複数のパートが、一段にまとめられた譜表において、どちらか一方のパートだけを指示するには、そのパート名(1.とか2.)を表記するか、声部を上下に分けて、片方の休みのパートには休符を記す。あるいは、上記2つの併用。

例)Horn1,2などの一段譜表で、1stだけを指定するには、「1.」と表記。あるいは声部を上下に分け、符尾が上向きの声部を作成、下の声部には休符を置く。さらに念のために「1.」の表記があれば、誤解の恐れは全くない。

ちなみに、数字や楽器名の表記だけものがあるが、指揮者の立場で言えば、符尾の向きが上下にわかれて、休符配置を施された処理のほうが、視認性が良い。ページにまたがっている場合にはなおさらである。

4)一時的な「a2」
複数のパートが、一段にまとめられた譜表において、そのほとんどが、おのおのの声部で、小節のある一部分や一瞬の拍だけが同一音になるようなケースがある。この場合「a2」表記をすると非常に煩雑になるときに限り、上下両方向の符尾、あるいは重複された符頭を使用するとよい。ただし一小節を超えるような同一フレーズに対しては「a2」が適当。

5)「solo」と「one play」(加えて「soli」)
「solo」には主導するような旋律や浮き立たせるような重要なフレーズに対して使用するのが妥当。単純に伴奏型や背景で、ダイナミクスないしはバランス、あるいは、前後のフレーズとの兼ねあいなどを考慮した目的で使うなら「one play」が最も的確。つまり「solo」には形態以上に表情も含まれた意味合い。その後「solo」がリセットされるところには「tutti」もしくは「all (play)」を表記。
ちなみに「soli」は「solo」の複数形で、一見矛盾に満ちた解釈が成立しますが、旋律を浮き立たせるような意味が含まれていると判断すれば辻褄が合う。

6)「gli altri」と「another play」
同一パート内で、一人が独奏を担当し、残りの人が別のフレーズを演奏するような場合は、部分的に譜表を2段に分け、独奏に「solo」もう一方に「gli altri」と指示する。なお、これも旋律と伴奏のような対比関係であり「one play」と指定する場合は「another play」が適当だろうか。

7)弦楽器のストップ(重音)
同一パート内でも弦楽器は重音が可能なので、声部の分割(つまりdiv.なのか)を指定しているのか、あるいはストップを要求しているのかが、非常に紛らわしい。ストップにも組み合わせの限界があるので、そこから判断できることもあるが、どちらともとれるような組み合わせは一番困ってしまう。あえて奏者や現場の判断というのであれば、このような姿勢もありうるが、パート譜起こしの写譜業では、いずれにせよ混乱するから親切ではない。ストップであれば、カギ括弧で重音を括る。あるいは「non div.」と記す。もちろん「div.」であれば、その旨を表記。

Finale NotePad2008 日本語版登場

楽譜作成ソフト「Finale」シリーズの入門版的位置付けの「Finale NotePad」の最新日本語版が登場しました。
Finalenotepad2008

http://www.cameo.co.jp/notepad/

無償配布なので、製品版のFinaleに比べて、それなりに機能制限がありますが、シンプルな楽譜ならば、問題ありません。あと、Finaleを持っていない人とのファイルのやり取りにも便利です。

製品版を持っている場合、基本的にNotePadは必要ないものなのですが、意外な使い道というのがありました。Finale2007(Allegro2007)以降、認証登録が必要になり、登録できるコンピュータが2台までという制限があります。認証登録しないと、インストールから30日間経つと、印刷や保存ができなくなります。

先日、出先のPCで、ちょっとFinaleのファイルを開いて印刷だけしたいということがありました。いつも、モバイル用の外付けHDDを起動ディスクとして使用しており、これだけ持って移動しています。そのため、Finaleの認証登録は自宅のMacだけで行っているので、このHDDに入っているFinale2008は認証が無効になっています。案の定、製品版のFinale2008による印刷は無効でしたが、NotePad2008を使って、無事に開いて印刷することができましたとさ。

まぁ、こんな特殊な使い方や、こんなケースも滅多にないかもしれませんが、いやはやNotePadに救われたという。

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