« 2007年5月 | トップページ | 2007年7月 »

=スコアとパート譜の連携対決(3)

前回Sib.の優れたポイントをまとめてみたが、今回は【あともう一歩、残念なところ】をあげてみる。

×複声部表記をそれぞれ単独のパート譜としてリンク処理ができない。

例えば、スコアでは、ホルン1,2のように二声部以上まとめて表記されるような場合が多い。Sib.ではこのような場合、新たにホルン1と、ホルン2のように個別の譜表を作成して独立して対処する(つまりパート譜編集用のスコアを別途編集する)あるいは、ファイル書き出しとして、個別のファイルに分離して編集するようになる。この時点でスコアとパート譜の完全なリンク機能は解除される。「すべての」パートをリンク処理できるのが、一番の利点だと思うのだが、このような場合に例外処理を求めるられるのは、いささか残念。ちなみにFin.では同様のケースにおいては、パート譜管理ウインドウ内で、片方の声部を隠し、個別のパート譜として処理できる。が、しかしこれも「可能」という範疇であって、演奏用の簡易なものであればよいが、あらかじめ入力時のレイヤー分けに工夫が必要であったり、より親切なパート譜作りのための細かな編集にはついていけない。結局は同様に書き出しの処理をすることになる。これについても次回以降まとめてみる。

×小節幅の変更ができない。

スコアには表記の必要のない情報には「ガイド音符」などがある、これは「パート譜のみ表記」の設定を施せばよい。一方でスコアのみ表記して、パート譜上では、別表記にするという例もある。例えば、省略記号。パーカッションには特に多く用いられるが、スコアでは改ページ後の最初の小節のみ、パターンを実記するが、パート譜においては省略記号の連続のほうが都合が良い。(以下サンプル)

1_3
2_2

このような場合、音符の実記部分を「スコアのみ表記」にして、パート譜上は表記しないで、省略記号を記号で配置するという方法で実現できる。ここまでは工夫次第だが、問題なのは小節幅が個別に編集できないというところ。当然、隠された部分には実際の音符分のスペースがとられてしまう。あらかじめ省略記号表記された小節とのスペースの違いがとても気になる。Fin.では同様の処理方法が可能で、しかも小節幅の数値設定が可能なので、すべての小節を同じ幅にすれば、このような見た目の不自然さは解消できる。これはFin.に軍配が上がる。

×持ち替え楽器の楽器名の変更ができない。

スコアの左端には、パートの省略楽器名が記されるのが一般的だが、途中で楽器を持ち替えた場合、そこからは、持ち替え後の楽器名を表示したい。しかしながらSib.ではこれができない。Fin.では楽譜スタイルを使うと、いとも簡単に可能。Sib.では、単純テキストの背景を隠したものを、最初の楽器名の上に一つずつ配置していくという原始的な方法しか見当たらない。

=スコアとパート譜の連携対決(2)

細かな違いを検討する前に、基本的な両者(Sib.Fin.)に共通するパートリンクの概念をまとめておこう。

・スコアを変更した場合、それらは自動的にパートに反映される。
・パート譜上において、記号類の位置微調整やスラーなどのデザイン変更については、スコアからは独立して編集できる。(奇しくも、どちらも、編集したオブジェクトの色が「オレンジ色」で表示される。)
・パート譜のページレイアウトについては、それぞれ独立して設定できる。

上記のような、通常「パート譜」に求められる内容は、両者ともに一応ポイントは押さえられている。ここでは、まずSib.における【便利な優れたポイント】をあげてみよう。

○スコアとパートで「テキスト」のポイントサイズを変更できる。

スコアは五線ミリ数が細いので、そこに付随するテキストも相対的に小さくなりがちである。よって、パートのミリ数に対するものよりも、一回り・二回り大きくするのがバランスがよい。特にリハーサルマークなどは、スコアでは指揮者の視認性をよくするために、わりに大きめのサイズにしておくこともある。このような場合、そのままのサイズでパート譜に書き出した際に、バランスが悪い(必要以上にサイズが大きい)ので、書き出す前に、フォントの一括変更などでフォントサイズを変更するのがこれまでのパターンであろう。

このような対処をパートリンクで補えると非常に有用であるが、Sib.は、この概念を標準でコントロールできる。Sib.の「テキストスタイル」の設定画面に、スコアのときのポイントサイズとパート譜のときのポイントサイズの2つの属性設定がある。意外にもFin.には、この扱いがない、これは不思議である。さらに文字サイズ関連でいえば、五線に付属するテキスト以外にも、タイトル、作家名、著作権(コピーライト)表示、ページ番号(ノンブル)なども当てはまる。Sib.においては、これらテキストもスコアとパート譜で異なる文字サイズが設定できる。

○小節の割り付けを含むレイアウト情報を、パート間でコピーできる。

単純なスコアだと「1st Flute」と「2nd Flute」が、ほとんど同じフレーズで構成されていて、ピッチの違いだけというのもあり得る。こんな場合、どちらも小節割りは同様で、ページに対する段数なども共通で処理できる。Sib.なら、パートウィンドウの「パートレイアウトをコピー」を使うことで、あるパートのレイアウトを他のパートに対して一発コピーができる。これは便利。改行とか改ページや、段ごとに詰め込んだ小節などは、わりに手間や時間を費やして編集することもあるから、これが可能なのは本当に大歓迎。

○スコアだけに表示する、パート譜だけに表示する区別が容易である。

スコアには表記の必要のない情報には「ガイド音符」などがある。これらはメニュー「編集」→「表示/非表示」→「パート譜に表示」を選択するだけで可能である。スコア上では、それらは隠されており、パート譜上では「オレンジ色」で表示される。これは直感的に操作できる。Fin.でも同様の仕掛けは可能であるが、レイヤー分けして楽譜スタイルの機能で表示を隠すなど、まわりくどい手間が多い操作が必要となる。一方で、この直感的な操作性反面、細かな編集が出来ずに、あと一歩進んで欲しいと思う点もある。これは次回【あともう一歩、残念なところ】に述べる。

1_2

○パート譜上の長休符(マルチレスト)の幅の編集ができる。

長休符(マルチレスト)の扱いも問題ない。例えば、2小節のマルチレストと8小節のマルチレストが同一段内に存在する場合、幅が均等だと、あまり良い気がしない。(デフォルトで作成されたFin.のパート譜などには、よく見られることだが。)この場合は、長さにいくらか差を付けた方が断然把握しやすい。Sib.ではデフォルト幅を変更してくれる。さらに、手動で調整も可能。一方で、Fin.はデフォルトでは、すべて均等の幅になり、手動での調整も可能なはずなのだが、なぜかパートリンク機能上では不能という致命的なバグがある。これについては次回以降に触れる。

2_1

○松葉型クレッシェンド(デクレッシェンド)の横方向の調整が独立してできる。

松葉型のクレッシェンド(デクレッシェンド)もリンクしている。スコア上で長さを編集すれば、当然パートにも反映される。逆にパート譜で編集を行った場合には、独立して調整でき、スコアには影響がない。これも標準の仕様だが便利だ。スコアとパート譜では、譜割や小節幅が違うので当然、松葉の高さや長さが一致しないケースが多いからである。一方でFin.でもパート譜上では独立して編集できると思いきや、変な仕様というか、制限がある。これについても次回以降に触れる。

3_2
4_2

一方でSib.の場合は、改段時の松葉の高さを変更できないという致命的なウィークポイントがある。(以下サンプルを参照)

5_1

○音部記号などもスコアとパートで独立編集ができる。

以下のサンプルのように、スコアとパートで独立した音部記号が可能である。他にもトロンボーンをスコアはテナー記号で、パート譜はへ音記号で記譜したほうがよいなんてこともままあるだろう。この柔軟性はすばらしい。

6_2
7

○スコアのウインドウとパート譜のウインドウが独立している。

これはSib.の標準仕様だが、同一ウインドウでスコアとパートの切り替え表示されるよりは、スコアとパートを見比べることもあるので、それぞれ独立してウインドウが開くほうが、操作感がよい。こんな細かな所で気が利いている。Fin.はパートリンク機能内では、表示切り替えのみである。痒いところに手が届かない。

« 2007年5月 | トップページ | 2007年7月 »