LcND2017/02「音楽教室から著作権徴収の衝撃」
LinkclubNews掲載コラム、02月分より、
タイトルは「音楽教室から著作権徴収の衝撃」
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ネットでは、すでに大激論なのですが、2月に入ってすぐに、音楽業界にとって衝撃的なニュースが駆け巡りました。JASRACこと日本音楽著作権協会が、音楽教室からも著作権料を徴収する方針を決定したのです。
・音楽教室から著作権料徴収へ JASRAC方針、反発も:朝日新聞デジタル
私もこればかりは全くの他人事ではないので、すぐさまニュースに反応しましたが、さすがに驚きましたね。こんな解釈があっていいものかと…。ネット各所ですでに大きく取り上げられていますが、もう一度論点をさらっておきましょう。
ここでは「演奏権」が問題になっています。演奏権とは、公衆に聞かせる目的で演奏する権利(著作権法22条)です。これは生演奏以外にも、レコード・テープ・CDや再生装置などの再生も含まれます。お店のBGMだって著作権料が発生するのが現状。例外としては、非営利の場合(著作権法38条)です。ごく身近なカラオケだと、1回歌うごとに約5円ほど支払っていることになるそうです。これもカラオケの料金に当然転嫁されていると考えると、最終的には客が負担している構図とも考えられます。
さて、今回は、音楽教室のレッスンにも「演奏権」を適用して考えるというのがポイント。生徒さんが公衆にあたるのでしょうか。グループレッスンなら問題なく該当するのか、あるいは1対1のプライベートレッスンはこれに当てはまるのか? など、やはり解釈の難しい問題だと思います。そして、カラオケと同じように、生徒さんのレッスン料に、その著作権料が転嫁されることはおよそ想像できます。これが直接的な問題、それ以上に、もっと考えなければならないのが、社会構造への影響の方です。つまり音楽ビジネスや音楽そのものを嗜む文化の萎縮への懸念。
今回、検討されている音楽教室からの徴収額が、年間受講料収入の2.5%。つまり包括契約なんです。どの曲が何回使われたとか関係なく、一律にドン。って徴収するのです。放送やテレビ局はJASRACに対して、放送事業収入の1.5%を著作権料として支払っています。これも包括契約ですが、同じ包括契約でも、パーセンテージの違ってのも気になるポイントで、その算定根拠なども知りたいところです。
ちなみに、この騒動に対して「宇多田ヒカル」さんが、御自身のtwitterで「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。」という、つぶやきを残しています。ここでは勘違いされたか、混同がみられますが、正確に解釈する必要があります。ここで注意すべきは「学校」での話ではないのです。学校の授業での演奏に対しては、著作権法上、著作権料が不要というのは変わらないでしょう。(ただし、音楽の授業では不要であって、部活動は含まれませんので注意。)ともあれ何れにしても「学校」ではなく「音楽教室」が対象であることは区別しておかなければいけません。
これについては、さっそくヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所など音楽教育事業者から結成された「音楽教育を守る会」が民事訴訟に踏み切るとの方針を固めたようですので、今後の動向を見守る必要があります。
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