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2016.03.08

LcND2016/03「音階ってなんですの?」

LinkclubNews掲載コラム、03月分より、
タイトルは「音階ってなんですの?」
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唐突なテーマで恐縮ですが「音階」って、なんでしょうか?「音階」には、いろんなタイプがありますが、もっぱら「ドレミファソラシド」だっていうのは、おそらく大半の人は御存知です。じゃ、その個々の「音の高さ」は、どのように定めたられたのでしょうか?

この謎について歴史を辿ると、紀元前500年頃のギリシャの数学者、ピタゴラスに行き着きます。いわゆる「ピタゴラス派」は音楽や天文すらも、数学の一部だという認識に立ってました。「万物の根源は数である」という哲学にも通じるものです。

ピタゴラスの逸話エピソードとして、鍛冶屋の近くを散歩してたら、いくつかの鉄を打つ音が、すごくハモって聞こえてたと…。で、その金槌をよーく調べてみると、重さの比率が3:2だったとか2倍だったとか、つまり比率なんだね、ってことに気が付いた。しかし、これは伝説逸話であって、実際には金槌の重さの比率で、そのような現象にはならないらしいのですが、発想のヒントとしては絶対に見逃せない。その「振動数の比率」が、次のポイントです。

金槌の重さではなく、そのかわりに一本の弦を張った「モノコード」と呼ばれる装置を用いて検証していったというのが事実のようです。「モノコード」ってのは、ちょうどお琴のように、ピンと張った弦の途中にある支柱(駒)を移動して、弦の長さを自在に変化させて、弦を弾いたときに発生する音の高さを測定する装置といえばイメージしやすいですかね。

Monochord

ようやっと本題。一本の弦で、ちょうど真ん中のところに支柱を立てて弾くと、元の長さの時の音と最も協和して響く音が鳴るのです。ピアノでいうところの仮に「ド」が元の長さの音とすれば、ちょうど真ん中で押さえれば、弦の長さは半分になり、その時に鳴るのは「オクターブ上のド」です。つまり大事なのは、オクターブってのは弦の長さの比率=振動数の比率が、1:2ってところです。

同じように、弦の長さを1/3にすると、仮の「ド」に対して「オクターブ上のソ」が鳴るわけです。今度は「ソ」を基準にして1/3を鳴らすと「さらに上のレ」が鳴るという具合に、以下1/3の長さにする操作を繰り返すと「ラ→ミ→シ→ファ#→ド#→ソ#→レ#→ラ#→ファ→ド」と12回目で「ド」に戻ってくるわけです。ここではオクターブは相当高くなっていますが、オクターブ関係を還元して考えれば、音名としては同じ「ド」に相当するという意味。とはいっても、このピタゴラスの時代に、今のような「ドレミ〜」という音名は定まっていないので、あくまで、現代の用語を借りて説明しています。

FN COL 5 7 2mm 20

さて、この操作によって、音の高さが12個求められていることに気が付きます。すべてオクターブ以内に並べ直してみると、要するに1オクターブに含まれる12個の半音のピッチが、すべて階段上に求められることになります。ただ、このピタゴラスの検証では、ちょっとした不具合が生じます。12回繰り返して求められた「ド」と、理論上求めたオクターブの1:2の綺麗な比率で求められる「ド」の間に、若干の誤差が生まれてしまうんですね。

これを「ピタゴラスコンマ」といって、実際には約1/4半音程度の誤差なんです。カレンダーでいうなら、先の2月のように4年にいっぺん「うるう年」で調節するくらいの誤差のイメージ。ところが、カレンダーなら誤差調整で済んでいますが、いやいや、一年に30日、31日、28日なんて我慢ならない、毎月同じ日数(時間)になるように、12の月を均等に分けようじゃないか!と考えた結果が、音楽でいう「平均律」ってやつでしょうか。

カレンダー的には、30日の月と31日の月があっても、毎年決まった順序で進んでいくので、特に問題ないわけですが、音楽は12の音を均等に割ったおかげで、1月から急に10月に飛んで、また2月に飛んで、最後に1月に戻るみたいな、ランダムシーケンス、つまり全く誤差が気にならない自由な「転調」という究極の魔法を獲得したわけです。

そんなこんなで、音楽の基本的な仕組みを、もっとわかりやすくしたマンガ本が発売されます。当方が監修しております。興味持っていただけたら嬉しいです。

・マンガでわかる! 音楽理論|リットーミュージック

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