« LcND2014/01「音痴は治るんですか?」 | トップページ | LcND2014/03「難聴について・著作権について」 »

2014.02.11

LcND2014/02「前代未聞の作曲詐欺騒動」

LinkclubNewsDigest02月分より、
タイトルは「前代未聞の作曲詐欺騒動」

------------------------------

毎年この時期は、NAMMショーの新製品などを、
ワクワク楽しく紹介している時期なんですが、
いやはや、音楽業界では、とんでもない騒動が勃発してますので、
そのあたりを。

23948700 8

報道やSNSでも、凄い勢いで話題にされてます。
著名な作曲家や音楽評論家も次々とブログや記事で意見をアップという事態。
わたしも、私的なつぶやきを我慢し続けておりましたが、
こういった少なくとも公開される記事ならば、
幾ばくかの意味があるかとは思い、
端くれの戯言ではありますが、今
回の珍事を取り上げてみる次第であります。
もちろん、今回のスキャンダルについては、
あらゆる見地からの意見があって当然と思いますが、
一人の音楽に携わる人間として綴っておきます。

彼の名前を知ったのは、いつだったか?
おそらく、作曲家の吉松隆氏のブログでの書評だったと思う。
2008年の1月13日、タイトルもそのまま、
佐村河内守「交響曲第1番」(講談社)についての記事。
当時はへぇ、と興味を持ったが、
その後、取り立てて追いかけてみようとは思わなかったし、
しばし忘れていた。

そのうち、NHKスペシャルだの、
他の民放の番組で取り上げられるようになり、
ああ、あのときに見た名前だなという記憶が蘇ってきた。
それでも実際に番組を観ることはなかったし、
一応それらしき話題だけは周りからの情報で耳に入ってきた。
まぁ、人のことは言えないが、珍名といえば珍名だし、
如何にも作曲家っぽい名前といわれれば、確かにそう思った。

彼の名前が徐々にメディアでとりあげられるようになってきたときに、
それでも僕は、彼の作った音楽を聞いてみようとは思わなかった。
交響曲とか、オーケストラ作品の動向というのは、
穏やかなムーブメントであると信じていたし、
どこから切り取っても、単に特異な、お祭り騒ぎだったので、
なにかしらの胡散臭さとか、
いやなビジネス臭がぷんぷんだったことは間違えない。

加えて、いわゆる皆がいう、サイドストーリーが強すぎた。
それこそ、色眼鏡ならぬ、色補聴器で
作品に接せなければならないことが明らかだったので、
一向に聴く気にならなかったし、
なんとか趣味人として、個人的な下世話な興味に最低限の抵抗をした。
正直、友人知人から周りから聴いてみるべきというお誘いもあったのは事実だが、
それらも含めて、評判やメディアや・業界の取り上げ方も、心底不気味だった。
数カ月前だろうか、JR山手線の中吊りで取り上げられた、
オーケストラのコンサートツアーの広告なんかを観たときには、
最高潮の虫唾が走った。
今となっては、これも後出しジャンケンのような勝手な告白になるが、
事実として記す。

あの図面というか指示発注書も作曲行為だという、一部の意見が聞かれたが、
作曲という領域の線引きが難しくなってきているのは、商業系では顕著かもしれない。
それにしても、純音楽では、玉書いて
(あるいは文字でも図形でも、電子形態でもいいんだけど)
演奏者や演奏用の楽譜(に準ずるもの)を書く人・定着させる人が作曲家であるべき、
といった(個人的)幻想が、こんな契機に容易く崩れ去るのは、
端くれとしても相当我慢がならない。
いや、ごめんなさい、今回の騒動とは、やはり切り離すべき問題かもしれない。

そして次いで言うなら、今回のゴーストライター新垣氏の評価が、
この機に上がるというのもおかしな話だと思っている。
あたかもゴーストライターが世の中の必要悪のような存在として、
合法という風潮も不気味そのもの。なぜか業界関係者では、
過剰な擁護派意見が圧倒的な印象。
実直であふれる才能と人柄に免じてという感情や
シンパシーを見出そうとするのは、とてもよくわかるのだが、
ここは社会的な一定の制裁を受けてから、
なおも引き続き穏やかに活躍するのが、
縁もゆかりもない音楽家からしてみれば、
きわめて真っ当なバランスだと思います。

と書きましたが、私も含め、人の褌で相撲をとるというドキュメンタリー展開が、
これからますますふくれあがるということだけが、
今回の騒動の最たる出来事とならないように、
これからの佐村河内守氏にまつわる、対応あるいは釈明、
処罰を見届けたい一心です。

|

« LcND2014/01「音痴は治るんですか?」 | トップページ | LcND2014/03「難聴について・著作権について」 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: LcND2014/02「前代未聞の作曲詐欺騒動」:

« LcND2014/01「音痴は治るんですか?」 | トップページ | LcND2014/03「難聴について・著作権について」 »